なぜ、今、日本でDXが議論されるのか 〜 注34

公開: 2021年4月29日

更新: 2021年5月18日

注34. 古い電気通信法とインターネット

日本の社会では、第2次世界大戦が始まる以前に定められた電気通信に関する法律を、戦後、若干の修正を加えて成立させた電話の利用に関する電気通信法に基づいて政府規制が行われていた。戦後の法改正でも、電気通信事業者には、元の電信電話公社の独占が想定されていた。その後、第2電電として民間の企業の参加を許すような改正は実施されたが、法律の基本を見直すことはしなかった。

この電気通信法では、人と人が電話器を利用して、声を使った会話を行うことで、意思疎通ができるようにする電話システムが想定されていた。つまり、通信を行う発信者と受信者は、人間であることを前提としていたのである。コンピュータが誕生して、電話回線を利用したデータのやり取りが始まっても、通信を行う行為者としては、人間が想定されており、機械から発せられる信号を音声信号としてやり取りすることが前提となっていた。

1980年代の後半に米国社会で普及し始めたインターネットは、情報の送信側も受信側も、コンピュータであり、そのデータ交換については、直接人間は関係しない。さらに、電話と異なる点は、あるコンピュータが送信した情報を、別のコンピュータが中継し、さらに別のコンピュータへと情報を中継できる点である。これは、それまでの電話では、考えられなかった通信のやり方であった。このようにインターネットでは、新しい利用が生まれつつあった。

つまり、古い電気通信法では、そのような新しい通信の利用に対応することが難しくなっていた。また、日本社会においては、電話の利用が限定されていたため、電話料金が米国などと比較すると大幅に高く、常時接続が望ましいコンピュータ間の通信に用いると、通信コストが高くなり過ぎると言う問題があった。さらに、企業における情報漏えいの防止を考えると、コンピュータ通信の漏えい防止は、人間の会話による防止よりも、はるかに難しいことがあった。

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